関西学院大学の社会人女性対象プログラム
「ハッピーキャリアプログラム」
プログラム概要
2008年から3年間の文科省「社会人学び直しニーズ対応教育推進プログラム」委託事業を経て、2019年度でハッピーキャリアプログラムの女性の仕事復帰・起業コース(平日昼間・土曜日開講)は12期目を迎えました。平日夜間・土曜日開講の女性リーダー育成コースは6期目となります。仕事復帰コースは6ヶ月、リーダーコースは10ヶ月のプログラムを年1回開講しています(定員は各20名)。仕事復帰・起業コース受講者の属性は、育休中、パートタイム勤務、フリーランス、起業準備中の方と様々です。居住地としては、大阪・兵庫を中心とした関西圏の他に、徳島など遠方から通う受講者もいたそうです。期によって受講者数にバラつきがありますが、最近は、育児休業者や起業希望者が多く、またリーダーコースの需要が高い状況です。
2020年1月、同プログラムが開講されている関西学院大学大阪梅田キャンパスを訪問し、同プログラム主宰の同大専門職大学院経営戦略研究科教授大内章子さんが担当する「モチベーション&リーダーシップ」の授業を見学した後に、大内さんと仕事復帰・起業コースの2人の受講者に話を伺いました。
関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科教授 大内章子さん
従来の仕事復帰・起業コースと並行して、2019年10月から東北公益文科大学大学院(山形県鶴岡市)と連携して授業を行っています。本日は公益大へ配信する授業を撮影していましたが、オンラインでリアルタイム配信する授業もあり、その際には関学と公益大の受講者がディスカッションなどで活発に意見交換をしています。
コンセプトである「自分らしく働き、生きる」「女性の活躍が企業を変える、社会を変える」は12年たった今でも変わりません。就職がゴールではなく、各自のゴールを目指して、自分らしく働き、生きていかれるように、カリキュラムを組んでいます。グループワークやケースディスカッション、グループ発表を中心とした授業で、互いにサポートし合う中で受講者のつながりが深まり、力をつけていきます。これまでの修了生は200名を超え、修了生が現役の受講者のために企画開催するセミナーや、ハッピーキャリア独自のSNSで、修了生と現役生が交流を深めています。
男女共同参画センターとのつながりとしては、大阪市男女共同参画センターにて、文科省委託事業の際にクレオ大阪の保育施設と教室を利用させていただいた他、現在でも受講者のインターンシップ受け入れや広報等でご協力いただいています。
今後の課題は、女性のためのリカレント教育の推進だと考えています。これまでお受けした国・地方自治体や複数の大学からのヒアリングの中で、地方都市では、大学が女性のためのリカレント教育に取り組むことが難しく、女性は学びたくてもなかなか学べない状況があることがわかりました。そのために開講した大学連携によるオンラインコースを全国に広めていきたいと思っています。オンラインコースでは“地域を超えた「知の融合」”が生まれています。また、2019年12月に、日本女子大と本学など6大学で「女性のためのリカレント教育推進協議会」を発足しました。本学と他大学とのいい循環が生まれる持続可能なシステムを作っていきたいと考えています。
板場衣世さん(40代)
Ⅰ.プロフィール
大学卒業後、中学教員になりました。後に別の科目の免許も取り担当科目を変えて教えていました。約20年の勤務の後、末の子どもが小学校に上がったのを機に、40代のうちしか起業できないと思い切って転職しました。Web制作会社に勤務しながら婚活事業を起業し、現在はその代表も務めています。夫と子どもの6人家族です。講座には片道45分ほどで通っています。
Ⅱ.受講動機
受講のきっかけは、ハローワークで見つけたパンフレットです。ビジネスの基本を学んでみたいと思い、申し込みました。リーダーコースとどちらにするか迷いましたが、子どもがいて基本的に夜の受講は難しいため昼間のコースにしました。
Ⅲ.プログラムの評価
講座は、課題がたくさん出るのでスケジュール的にはハードでした。週に2~3回の通学で、多い時には一度に5講座を受講することもありました。科目は選択制なので、働きながら受講など都合に合わせて科目を選択できます。IT関係とプレゼンテーションの講座は受講者に難しく感じられていたようです。自分は教員時代の授業で慣れていますが、プレゼンテーションは皆苦労していたようです。
修了生から修了1年後、2年後、3年後の話を聴く機会がありました。プログラム修了生と受講者のSNSがありネットワークも充実しているようです。
キャリアデザインでは自分の強み弱みをブラッシュアップしていき、今後どうありたいか、何をしたいかが明確になりました。本で読んでも腑に落ちなかったことや、自分で気付いていなかったことを先生や周りから言ってもらうことで発見があり自信が持てました。
通常のビジネススクールに比べると断然コスパは良いと思いますが、半年で10万~35万円かかるのは人によってはきついのではないでしょうか。教育訓練給付制度を利用して安くできることをもっとアナウンスしてもよいと思います。オンラインコースはどこでも学べる良さがあるので、進めるとよいと思います。
Ⅳ.インタビュアー所感
板場さんは、プラス思考の意欲的な方という印象でした。教員時代のキャリアは順調でしたが、自らの決断でビジネスの世界に転身することを決めました。そのビジネスに活かそうとの目的意識をもって受講されているので、プログラムの価値をしっかり吸収できていると感じました。
受講を通じて自己評価もさらに高めた様子です。修了後は講演活動に力を入れていきたいとおっしゃっていました。講師を育てたり、子どもにコミュニケーションを教えてあげたりなど、人材育成にも取り組みたいとのことです。「自分らしく働き、生きる」というプログラムの目指す成果につながっていくものと思います。
講座にはグループワークも多く取り入れられていますが、受講生同士で刺激し合える点も学びの成果につながっているようです。募集に際して、応募があればすべて受け入れるのでなく、面接等の選考により受講生を絞っていることも、講座の質を保つ点で意味があると考えます。
杉森友恵さん(30代)
Ⅰ.プロフィール
大学卒業後、入社したインフラ企業に勤めて約10年になります。春に第一子を出産し、現在育休中。4月に復帰の予定です。大阪市内在住で夫と子どもとの3人家族です。通学時間は約30分。受講日には奈良の実家から母に来てもらい子どもを見てもらっています。
Ⅱ.受講動機
出産後、夫が駅でポスターを見つけてきたことがきっかけで、講座の存在を知りました。新しい学びを広げてみようと思ったことと、一年の休業後、自信をもって復帰、キャリアアップできるようにと踏み出しました。他にも、たまたまですが、その頃、夫が4か月間海外へ行くことが決まり、その間、子どもと一対一の生活になることになりました。なので、受講は自分自身のリフレッシュにもなると思いました。
ハッピーキャリアには、「キャリアを振り返る機会」と、「これからの自分を描くための学び」の両方があります。通常のビジネススクールとは違う良さがあると思い、説明会に参加して迷わず応募しました。
Ⅲ.プログラムの評価
受講して一番良かったのは、人とのつながりを持てたことです。受講生の中には他にも育休中の方や子育ての先輩もいます。受講生同士子育ての悩みを相談できることがよいです。また起業を目指している方もいます。自分で何かを起こそうとしている方はエネルギッシュなので、私も刺激を受けて頑張ろうという気持ちになります。
プログラムの中では、一番最初に受けたキャリアデザインがビビッときました。漠然と考えていたことを言語化し、紙に落とし込んで過去を振り返り、自分を知ることができました。これを受けたことで他の講座もすっきりした気持ちで受講でき、学びの目標が明確になりました。私は、必修科目のほかに2つの選択科目を履修しました。授業を受ける間、こどもの面倒をどうするかという問題があるので、その問題が解消できれば、もっと受講できたかなと思います。例えば、保育のサービスがあれば、有難いです。授業料は、通常のビジネススクールに比べてとてもリーズナブルで、サポートも充実しているので、私は満足しています。
ハッピーサポートの講座も希望すれば受けられるので、殆どの方が自分に合うものを利用しています。例えば、再就職される方は、面接やマナーの講座を受けられています。キャリア面談では、この先の進路についても相談もできます。また、修了生からは私たち12期生のために交流会も開催していただきました。
Ⅳ.インタビュアー所感
杉森さんは、育休中にぴったりの講座を見つけたとおっしゃいます。踏み出してみると学びの世界は面白く、これからも学んでいきたい、後輩にも勧めたいとおっしゃいます。
必修科目として最初にキャリアデザインの講座を受けられるのが、プログラムの魅力の一つといえるようです。講座から色々な気付きを得て、人生観が変わるという思いを持ったそうです。受講生に様々な職業の人がいて、互いに刺激し合えることが学びのプラスになっているといえます。また、育休中や育児経験者など同様の立場の受講生と出会えたことも、学びを進める励みになっているようです。再就職や起業へのサポートが得られる「ハッピーサポート」は、無料で活用できることもあり、受講生に喜ばれているようです。
半年という受講期間は、育休中の人にはちょうどよい長さだと思います。必修科目と選択科目との組み合わせで、無理のない受講計画を立てられることも、育休中のニーズに合っているといえます。
杉森さんは、復帰後は、学んだことを生かして自分らしくコミュニケーションをとりながらリーダーシップを発揮できるよう頑張りたいとおっしゃっていました。前向きな気持ちで四月の復帰を迎えられることでしょう。