モデル事業:ウィメンズネットこうべ WACCAの事例

事業の概要

WACCA 事務所の様子

 WACCA(わっか・・・women and children care center)は、1990年代から神戸市で女性シェルターを運営してきたNPO法人女性と子ども支援センター ウィメンズネットこうべが、2013年秋、女性や子どもたちの生活再建に資するために、いつでも気軽に立ち寄れる居場所としてオープンなスペースWACCAを長田区の商業施設の一角に開設しました。
 事業内容は「女性たちの学びと就労準備の場」「シングルマザーと子どもの仲間づくりの場」「女性たちの居場所と仲間づくりの場(相談と自助グループほか)」「子どもの学習支援と居場所づくり」。とくにシェルターを出たなど困難な状況にある「女性たちの学びと就労準備の場」がどのように運営され、結果が出ているかを、2019年9月5日にWACCAを訪問し、担当スタッフの茂木美知子さんからお話をお聞きしました。


茂木美知子さんの話し

「女性たちの学びと就労準備の場」について(茂木さんのお話)
「2015年度に内閣府のモデル事業に採択され、8カ月間実施しました。13名が利用し、うち、シングルマザーが8名、子どものいないシングル女性が5名です。13名のうち5名は短大、大学卒でしたが、多くは学歴が高くなく、また中にはかつてシェルターに母に連れられて入所し、子の立場だったが、今は「親」として利用した女性もいます。学歴があっても子連れのシングルマザーがキャリアアップを目指して独学で資格取得をめざすのは容易ではありません。子どもの病気や親の介護、就労との両立が困難など、多くの要因で学びの機会を中断せざるをえない状況があります。子どもの保育の確保や、価格が安価であることなどが重要な条件となります。その意味でも、シングルマザーが保育付きで、学習支援を受け、集中的に学習の場を獲得することは重要です。
 学ぶ目的は、高卒認定資格取得、看護学校受験などです。どの人にも共通する壁は「生活苦」と「心身の不調」で、学習に専念するのが困難でした。長い間生活のベースがないケースも多く、中学校にもあまり通っておらず、基礎学力がない人や、せっかく看護学校に入ってがんばっていても、病気になって学ぶことをあきらめてしまう人もいます。細やかな支援が必要だと思います。
 このWACCAでは、よく似た境遇の参加者たちが「学ぶ」という同じ目的で交流しあうことで学習意欲を高めたり、生き方が前向きになる姿が見られます。この「場」が学習のみならず、生き方に影響があったことも大きな成果です。何より学習している参加者の表情や、声から喜びや、誇りすら感じられます。人はどんな時でも、また、いくつになっても夢を持つことができるのだということを明らかにしてくれました
 2016年度は民間の助成で「DVなど生きづらさを抱えた女性のための居場所づくり」として継続しました。引き続き、学習支援と並行して、就労支援も実施。WACCAの建物の1階にあり、別のNPO法人が運営するチャリティー古着ショップに短時間でもスタッフとして就労体験をすることで、社会参加の意欲が出ています。中には障がい者手帳を取得し、就労移行支援事業所に通い、障がい枠で働いて一人暮らしをする人もいます。働くことで人とかかわることを学んでいき、そこの安心して立ちよれるWACCAがあることが支えになっているようでした。
 困難を抱える女性たちが、学びなおしの場を得て、働くこと、人とかかわることの学びなおしの機会となっていること、自分がしたいこと、できないことの落差に悩まされてきた女性が、失敗してもいいという「行きつ戻りつ」の緩やかな体験を学ぶ機会となり、エンパワメントされていきました。
次に、第2回未来応援ネットワーク事業としてWACCAを実施。子どもの学習支援の幅を広げたところ、子どもの参加者数が目標の136%を上回りました。また子どもたちの学習成果も出てきて、中学3年生全員が高校合格を果たすことができました。中には不登校に悩んだ子もいましたが、最後まであきらめずにスタッフのみならず、参加者皆で支えあった結果でした。
 子どもが参加することでその親ともつながることができました。子どもは親が学ぶ姿を見て学ぶことの大切さを実感できました。
 この場で行っているのは「学び」という名の「生きる力をつける」支援です。
「自分がどうしたいか、などとは聞かれたことがない」という女性が目標をもって生活を立てていくことをサポートすることの必要性を実感しました。
 WACCA特長は、①だれでも来れる、②出口がある、③戻ってこれる、ことです。
 このように民間の自主事業として取り組んできたWACCAでしたが、2018年に初めて行政や、他機関とケースカンファレンスができた(中学SSW、児童相談所、WACCA)ことも大きな成果です。さらには、2019年に、国土交通省居住支援法人活動支援事業として、シングルマザーの住まい支援に取り組み始めるなど活動の幅を広げています。」


今後の課題等

 茂木さんからは 困難を抱える女性たちへのきめ細やかな支援の重要性と成果をお聞きするなかで、確実に女性たちがエンパワメントされ、一歩を踏み出していく様子がわかりました。今後の課題については、継続するための資金難・人材難が課題ということでした。
「女性の学習支援には「学力」「生き方」「別の選択肢を広げる」などの子どもとは違う「学び」を得ることができるが、このような「場」は、始めたらやめるわけにはいきません。公的支援がないので、細々と継続しているが、フルタイムスタッフも最低賃金を受け取るのがようやく。いろいろな助成金を取って、パッチワークのように資金をつなげています。このような女性支援は、かつては女性たちが手弁当で活動してきたが、若い世代では働かなければ生計が立たない。それもあり、活動を支える後継人材が育ちにくいのです。
 また、当事者が支援者(対人援助職)になりたいと希望する場合、様々な要因の克服が必要であり、容易ではありません。更には行政との連携や、このような草の根の支援など多くの支えによって女性がエンパワメントされることにつながっていくと思います。地元の兵庫県、神戸市の男女共同参画センターは行政直営で、職員には異動があります。担当者にも引き続き理解と協働を呼び掛けていく必要があります。」

神戸市長田区 阪神淡路大震災復興と地域活性化のシンボル 鉄人28号