女性の学びとキャリア形成・再就職支援を一体的に行う仕組みづくりと
ニーズ調査によるリカレント教育モデル構築のための実証事業の実施
日本女子大学では、2007年より育児や夫の転勤、自身の進路変更等で離職した女性を対象に、1年間のリカレント教育を提供してきました。実施から10年が経過し、入学者や入学希望者が習得したいと考えるビジネススキルや、受入企業が求める人材像が変化してきたといいます。そこで、社会情勢に適応した新しいリカレント教育プログラムのあり方を検討する試みが始まりました。
2018年12月22日、日本女子大学を訪ねてお話しを伺いました。
この事業の概要
社会人女性や企業を対象としたニーズ調査をもとに、社会情勢に適応した支援のあり方の検討と実証事業を実施し、リカレント教育のさらなる充実につなげる事業です。
日本女子大学 生涯学習センター所長・文学部教授 坂本清恵さん
この10年間で、遠方からの受講者が増えてきており、中には転居をして受講している方もいます。また、直近まで仕事をしていた女性や、育児休業中に受講するなど就業中の方の受講も増えています。このように、受講生が多様化するなか、今のままのリカレント教育課程でよいのかという問題意識が生まれました。受講生は何を学びたいと考えているのか、また、リカレント教育課程の修了者を採用する企業は、彼女たちにどのような能力を求めているのか、ニーズ調査を行いました。
これらのニーズ調査の結果を踏まえ、新たなリカレント教育プログラム(「日本女子大学リカレント教育課程 女性のためのビジネススキルアップコース(全5回)」)を構築し、12月から実施しています。
この新たなコースは、社会人女性や、主婦の方、離職中の方、育児休暇中の方、ビジネススキルアップを考えている方等、学歴や年齢に関係なく幅広い層に受講いただけるものにしました。毎回約20名の様々なバックグラウンドを持つ人たちが参加し、熱心に受講しています。
実施にあたっては、関係者・関係機関へのアンケートやプログラム、報告会を効果的に実施するため、日本女子大学、東京労働局、東京商工会議所、文京区、豊島区、鳥取県、名古屋大学、一般社団法人中高年齢者雇用福祉協会(JADA)をメンバーとする実行委員会を組織しました。
今回の実証事業を通じて、受講希望者や企業から示された新たなニーズに対応したリカレント教育課程のモデルを構築し、全国に発信していきたいと考えています。また、他の地域でも同様のモデルを展開したいと考える大学や関連する団体とも積極的に連携し、女性が学び直す機会を広げていきたいと考えています。
日本女子大学 通信教育・生涯学習事務部生涯学習課リカレント教育課程担当課長 茂木知子さん
企業を対象としたニーズ調査でリカレント教育への認知度は決して高くはありませんでした。調査を通じてリカレント教育について知り、理解してもらう機会ともなったのではないかと考えています。また、リカレント教育の修了生を積極的に採用している企業のほか、リカレント教育に関して認知度が低い企業がリカレント教育に求めるニーズについても、課題を抽出していきたいと考えています。
今回実施しているビジネススキルアップコースは、今回の文科省からの委託事業として本学が実施した全国の社会人女性を対象とするモニター調査を踏まえて構築したものです。リカレント教育課程では、キャリアマネジメント、英語、ITスキル、日本語を4本の柱として組み立ててきました。ビジネススキルアップコースで提供しているような、働き続けていくためのセルフマネジメントに関わるコンテンツは新たな要素です。今後は、参加者アンケートなどにより、新たなリカレント教育のモデルプログラムとしての有効性を測定・検証していきます。
受講者の皆さんの声
Aさん
5回のすべての講座が有益でしたが、特に今回のタイムマネジメント講座が一番役立ちました。タイムマネジメント講座で学んだ効果的なスケジュール管理やタスク管理を、早速実践してみたいと思います。
Bさん
ストレスマネジメントやマインドフルネスについての講座が有益でした。マインドフルネス講座で教えていただいた呼吸方法など、講座の中にワークショップの時間を設けていただき、実際にやってみる時間があったのでわかりやすかったと思います。
Cさん
第1回から第3回の講座を受講してメンタルヘルスに関する理解が深まりました。特に、マインドフルネスに興味を持ち、リカレント教育課程の友人から情報を教えてもらったり、自分でも本を買って勉強したりしていて、大変役に立つスキルを身に付けつつあると実感しています。
Dさん
第4回講座のダイバーシティセミナーでは大きな気付きがありました。長年、「女性であることを意識してはいけない」と思って働いてきましたが、今回の講座を受講して、「女性であることを意識してもいいんだ」ということ、そして、「年齢が上がってもできることがあるんだ、これからなんだ」という前向きな意識を持つことができました。
Eさん
5講座すべて役に立つ内容でした。特にメンタルヘルスについては、先生に教えていただく中で、今の自分がどんな状態なのかを客観視できるようになったと思っています。