モデル事業:富山の事例

学び直しを通じたオーダーメイド型キャリア形成支援

 女性の就業率、共働き率が全国トップクラスを誇る富山県。しかも持ち家率は全国1位、1人あたりの県民所得は全国5位 で、暮らしやすさ、豊かさを「日本のスウェーデン」になぞらえる識者もいる富山県ですが、出産後の女性の就業継続には課題があるといいます。そんな富山県で女性のための「学びを通じたオーダーメイド型キャリア形成支援」が始まりました。そこで10月24日、富山大学 男女共同参画推進室の市田蕗子室長と富山県民共生センター サンフォルテの牧野圭子事業課長を訪ねてお話を伺いました。

この事業の概要

 富山県では働く女性が多く、女性の正社員割合も全国平均を上回っています。育児休業取得率も高いのですが、それでも出産を契機に5割が就業を辞めており、出産後の就業継続の対策が求められています。

 


富山大学 男女共同参画推進室長 市田蕗子さん

 県内には7高等教育機関で構成される大学コンソーシアム富山があります。そのなかに地域の産業振興や人材育成を目的として、産業界、高等教育機関、自治体及び金融機関が一堂に会する「産学官金ネットワーク会議」という連携組織があり、大学は産業界とのパイプがあります。この事業を企画するにあたって県内10社にインタビューしたところ、企業、特に大企業では育児休業制度も整っているのですが、育休取得中の社員への復職支援は行っていないことがわかりました。また、県が実施した調査では、育休中の女性も、いったん離職した女性も潜在的には働きたいと思っている人が多いという結果が出ています。それぞれのニーズに合った学びの機会を提供することが復職やその後のキャリア形成に役立つはずです。

 ハローワーク、大学、男女共同参画センターなどが職業訓練や公開講座、女性の再就職支援のための講座など、いろいろなリカレント教育の機会を提供しているのですが、相互につながりがないのが現状です。今回の事業では、代表機関である富山大学に新たに「キャリア形成コーディネーターデスク」を設けて、担当のコーディネーターを配置します。そして、女性一人ひとりのニーズに合った学びのプログラムを提案する、オーダーメイド型の支援をしていきます。
 富山大学としては、この事業のために大学が持つ知を結集して、4回シリーズの「女性のための再就職支援講座」を実施。続けて「女性のためのキャリアUP支援講座」も開設します。


「女性のための再就職支援講座第3回」受講者 岩崎明日花さん

 訪問当日はちょうど支援講座の開催日でした。金融機関にお勤めで現在は育児休業中という岩崎さん(20代)は、会社経由でこの講座を知っての参加です。経済の動きに理解を深めるこの講座は、仕事とのかかわりが深い分野で興味深いとのこと。ママ友は専業主婦の方が多くて、育休後にそのままお子さんを家でみていたいという思いと、仕事への思いのあいだで気持ちは揺れるといいます。育休中の女性たち同士で、「短時間勤務を選択したらどうなる?」とか、「2人目はどうする?」などなど、本音で話せる場が欲しいとおっしゃっていました。


富山県民共生センター サンフォルテ事業課長 牧野圭子さん

 サンフォルテでは「チャレンジ支援コーナー」で女性の就職や再就職についての相談を受けており、センターの2階にはマザーズハローワークがあるので、日ごろから連携して支援しています。県からの委託事業として「女性の再就職パワーアップ応援講座」をやってきたのですが、大都市圏からの企業や工場の移転が増え、また郊外のショッピングモールなども働き手を求めていて、就職先はたくさんある状況の中、じっくりと勉強した上で再就職に踏み出そうという方が、最近、少なくなってきているように感じます。女性たちには、先々のキャリアを考えて、再就職をしていってほしいと思います。
 今回の富山大学とのコラボレーション事業を通じて、サンフォルテの情報を女性たちに届けるルートが増えればよいと思っています。また、これまで企業側のニーズを直接聞く機会はなかったので、その窓口として機能することを期待しています。


1 平成26年度の数値。出典「100の指標 統計から見た富山」より
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/shihyo/_shihyo29/_admin/018.pdf